2020年5月18日(月) 曇り 直島
昨日、日曜日の島には、急に岡山や香川の外からの観光客や釣り客が増えた。
徐々に、コロナの流行が収束に向かおうとしているようで、
人々は急激に日常に戻ろうとしているようだ。
昨日の朝、家の入り口の扉を開けると、目の前の普通の道路脇に、テントをはって堂々と食事をする一家がいた。息子は上半身裸だ。
僕の日常に「日常から離れてきた特別な時間(=観光)」がドカンとぶつかってきた瞬間だった。これが直島か。うむ、なるほど。
田舎にいながら、「都市部では急激に人の移動が増えたのでは」と想像していたら、
今朝のニュースでまんまとその予想は当たったようだった。
僕は観光地に住んだことがないが、この島はどんどん観光客が溢れていくのだろうし、僕の日常はどうなっていくのだろう。恐ろしくもあり楽しみでもある。新しい観察の対象であり新しい日常だ。
僕は、手書きの手帳を愛用していて、そこにスケジュールを書くことがもうこの十年くらい続いていた。
それは、ただ、スケジュールを書き込むリマインド的機能だけではなく、
新しく入った展覧会予定を未来に書き込みながら心の準備と興奮を感じたり、終わったイベントに感想を書き込みながら、経験を反芻して満足感や反省に浸ったり、そう言う存在だった。
ただ、今年の手帳は白紙に近い。
それは、ヴェネチア後に国内の仕事が減るのではないか?ということを手帳を眺めながら感じ、島へ移住する気持ちも加速させたし。さらに、入っていた少しの展覧会やイベントもことごとく延期や中止になったし。この2ヶ月間、手帳を開かなかったし、書き込みもしなかったし、そういう気持ちにもならなかった。ある意味で手帳は、自分のペースを確認する道具であり、いつも身に付けて見ていた腕時計であったが、今回はそれを外したまま、忘れていたような2ヶ月だった。
ただ、
先週から再び、予定が再開したり増え始め、急に忙しくなり始めた。
今日、久しぶりに手帳の出番と、引っ張り出して書くことになった。
「よし!仕事だ!やったるで〜!」と言う興奮とともに。
虫の鳴き声を初めて聞き夏休みの終わりを感じるような感覚でもある。
もちろん、前のような日常感覚にすぐには戻らないが、震災の後と同様に、都市部では巨大な正常性バイアスがまた動いているし、一瞬にして前の日常に戻ろうとするのだろう。
リモート飲み会も、いつもは集まれないメンツで集まれて最高だったけど、居酒屋でガヤガヤしたいし。展覧会やトークイベントに浸って静かに脳みそぐるぐる回したいし。嬉しいけど怖い。
7月4日から、ウチの資料館もオープンする。嬉しい。今回は 瀬戸内「百年観光」資料館 と題した展覧会を始める。瀬戸内と直島の百年の観光の移り変わりを考える場所を作ります。過去100年間のガイドブックを集めている。まずは観光客以上に、島民の人にも是非遊びにきて、過去を思い出したり未来を考えたりするゆったりとした時間が作れたら嬉しいし。僕にこの島や瀬戸内の過去の体験を教えて欲しいなぁ。そう言う機会になると嬉しいなぁと思います。毎週土曜、僕が開けます。無料。
当たり前にあった文化や体験の素晴らしさを貴重に感じられる瞬間がまさに来ようとしている。
忘れまじ、この夏を。