津波石
あなたがいつどこからやってきたかたずねることはしません
ただ、その静かでおごそかなまなざしに、耳をすまします
鳥たちはあなたのまわりをせんかいし祝福し、あなたの頭上に巣をつくり
よりそうことで、深いアンドをえています
人はあなたのその堂々としたたたずまいに驚嘆し、意味を付与し、祈り、
モニュメントにし、記念撮影をします
ただそのすぐあとに、鳥たちも人も、歴史といういとなみも消え去り
漠然とした、時間以前の時間があなたのまわりをふわふわとただよいます
はげしい風と波があなたの体にごうごうとうちつけ
太陽があなたの肌をじりじりとやきこがし
そのからだを削りとるでしょう
しかしただ、その静かでおごそかなまなざしが、世界をじっとみすえるだけ
世界?それは人によってつくられるようなシステムでも、ちっぽけな平面的な広がりでもなく、とほうもない時間以前の時間のひろがり、人々の祈りが、
あなたを規定するまえのひびきあい
あなたがいつどこからやってきたかたずねることはしません
ただ、その静かでおごそかなまなざしに、耳をすまします
川瀬慈
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Anthro-film Laboratoryという企画で、大阪の国立民族学博物館で映像「津波石」の発表と討論を行なった。
”Anthro-film Laboratoryは、文化人類学、映画、アートが交叉する実践のなかで、言語に依拠するだけでは伝達されえない知や経験の領域を探求し、人文学における新たな知の創造と語りの新地平を切り開くことを目指します。” という川瀬さんが企画する研究会。
映像を見た翌日、川瀬さんから「詩」を頂いた。映像からインスピレーションを受けたという。