娘の靴

2020年12月10日 08:56 下道 基行 */?>

先日、美大時代の同級生(卒業してからも一緒にスタジオを借りていた)友人のFから、娘にプレゼントが送られてきた。開けてみると靴だった。絵本のはらぺこあおむしの青虫の顔がそのまま靴になっているもの。ショッキングな色と絵柄の靴に驚いた。僕や妻にはないセンスだ。
その時、そういえば娘の保育園で2歳児の靴箱に並ぶのはニューバランスの靴ばかりだなぁと思い出した。小さい子供の靴は選択肢が少ない。そんな中、ニューバランスは、値段は安くないがかっこいいし、丈夫だし、履きやすいし、色も落ち着いていて種類も多いから男子も女子も履けるし、ついつい買ってしまうのだが。でも、1−3歳児がニューバランスだらけなのは以前から気にはなっていた。

朝、保育園に行く前に、その靴を娘の足に履かせてみた。恐る恐る。娘はビビットな色のその新しい靴を気に入ったようで嬉しそうにはいた。さらに、かけてあった傘を手に持った。晴れているのに。猫の絵が前面に描いた赤い傘は妙にその靴と合っている。
保育園に向かいながら、娘の後ろ姿をみていて、明らかに、グレーや落ち着いたシンプルなコーディネートの中で靴と傘だけ目立っている。でも実は、逆に僕や妻の趣味で出来上がった服装の方が妙に気になっていた。
今まで、お古とかでもらっても趣味が合わないからとしまいこんでいた服も、どんどん彼女に選ばせて、僕らの意図しない、ブリコラージュみたいな服装になっても良いかも知れないなぁと静かに考えていた。

僕や妻の趣味からは大きく外れた存在を投げ込んできたFは、さすがアーティストだなぁと、妻と笑った。