中之島
国立国際美術館に向かう途中、中之島の川沿いの道を歩いた。
今年の夏、水都大阪の為に何度も自転車で走った道。
途中、ダイビルというレンガ作りのデコラティブな柱が印象的な建築が、人気がなく柵で囲まれているのが気になる。ボケッと立ち止まって見ていると、少し離れたところで、熱心に建物を撮影しているサラリーマン風のおやじさんが目についた。近寄って話しかけてみると、
「この建物、もうすぐ壊されるんですよ…。若い頃、この建物で働いていたから、来てみたんです…」と寂しそうにシャッターを切る。
なんか薄汚れたレンガ作りでロンドンっぽいいい味が出ている、装飾もごちゃごちゃしてて気持ち悪くてかっこいい…。
「僕もこの建物、気になっていたし、こういう建物が残ってるから中之島ってなんか、東京にはないいい風景だなぁって思ってたのに残念ですねぇ…というか、腹が立ちますね…」と俺。
「関東大震災のあたりに建てられたらしくて、大阪一のビルってことでダイビルって名前になったらしいです。立派な建物なんですけどねぇ…」
二人で何かしんみり。
お別れを言い、国立国際に向かう。
おやじさんは、垣根の中に足を突っ込んで、まだ熱心にシャッターをきっていた。
なんか、分るよ、おやじ。。
長い時間かけて残っていたモノは、一瞬で壊せる。残ってきた労力の遥かに少ない労力で、一瞬で消せる。そして、壊してしまったモノは、二度と見ることはできない。建物だけの問題じゃない、風景自体の問題。当たり前だけど、そういうことだ。
どうせ、壊す側の主張は、この辺りが一等地でこの古くさいこじんまりしたビルでは、モッタイナイからでしょう。
「町として需要な歴史が詰まった建物をつぶすのはモッタイナイ」 VS「一等地にこんなに低い建物モッタイナイ」
友人が住んでいた阿佐ヶ谷住宅もそうだった。勝者は大体後者の方。
帰りにジュンク堂へ行く。
本屋が入っている真新しい高層ビルの前の広場に、かつてココに建っていた旧毎日新聞の重厚な石造りの建築物の入り口部分の壁がポツンとモニュメントとして残されている。取って付けたような寒々しい保存だ。
「だから、こういうことじゃないんだよ…アホ…」
2009/12/09 21:19