Re-Fort PROJECT vol.5

2009年7月 7日 00:05 下道 基行 */?>

地味にもうかれこれ4年目の活動になるRe-Fort PROJECTがまた、夏に帰ってきますよ。
今回のメンバーは、言い出しっぺの下道ほか、
会田大也、中崎透、服部浩之、山城大督と、かなり強力で素直なアート陣が集まり、熱い夏になりそうです。是非参加してください。
(詳細は下↓)


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Re-Fort PROJECT vol.5
日食に花火/前夜はビール呑み砲台 

太陽が隠れるとき、ぼくらの花火が打ち上がる。


7月21-22日 夏合宿@下関〜北九州
7月22日 花火打ち上げ@打ち上げ;北九州市めかり公園、鑑賞;下関市火の山公園
8月1日-23日展覧会『戦争のかたち』@ハブ
8月8日-31日展覧会『Re-Fort PROJECT Vol.5』@MAC

Re-Fort PROJECT vol.5 メンバー(会田大也、下道基行、中崎透、服部浩之、山城大督)

※プロジェクト詳細情報

■7月21-22日
夏合宿!日食に花火/前夜はビール呑み砲台
21日夏合宿 参加費 6,000円(宿泊/食事込)※宿泊地 下関市火の山ユースホステル
※「夏合宿」からの参加だといっそう花火も夏も楽しめますよ!(遠足、ユースホステル、バーベキュー、ひと夏の...)また22日の花火打ち上げは午前中に予定しております。遠方からご参加の方は「夏合宿」からの参加をおすすめします。
22日打ち上げ花火 参加費無料(会場;火の山公園)

スケジュール
[7月21日]
14:00 火の山ユースホステル集合
14:30 関門トンネルを歩いて門司に渡り、めかり公園内の砲台跡を目指す。
18:30 門司港より連絡船にて下関にわたる
20:00 火の山ユースホステルにて前夜祭
[7月22日]
09:00 火の山公園の砲台跡へ向けて出発
10:55 花火鑑賞&撮影


展覧会par t1 『戦争のかたち』
8月1日(土)- 8月23日(日)12:00-27:00(火曜定休)
会場;ハブ(山口市道場門前2- 4 -19 2F TEL.083- 932- 5166)
料金;無料(飲食店のため要一品オーダー)

展覧会par t 2 『Re-For t PROJECT Vol.5』
8月8日(土)- 8月30日(日) 19:30-24:00
会場;Maemachi Ar t Center (MAC)
料金;300円(ドリンク付き)
*オープニングパーティ 8月8日19:30-

プロジェクトに関するお問い合わせや宿泊のご予約はMAC(服部、会田)まで
e-mail; maemachiartcenter@gmail.com
ユースホステル宿泊ご希望の方は、7/18までになる早でご予約ください。


今年の春、山口県下関市の火の山公園に登った。
この公園内には明治時代の砲台跡がある。僕たちは夏に砲台を使ったイベントをできないかボンヤリ企画して、ロケハンに来たのだ。
きれいに整備された園内には、戦争の遺構がゴロゴロと点在しており、その奇妙な存在感が遊具や花壇とのコントラストを形作っている。至って普通の日常風景に顔を出した冷たい質感のコンクリート建造物群は、僕らの想像の及ばない遠い世界の遺物のようだった。
僕らはそれを土の中から掘り当てたような...、日常にポッカリ開いた戦争への落とし穴を見つけたような...、そんな複雑な興奮を感じた。
「ここの砲台一帯は国定公園に指定されとるからイベントはできんじゃろぅなぁ...。向かいのあの山も昔の砲台じゃし、あっちなら公園になっとらんけぇ、もしかしたらバーベキューとかイベントもできるかもなぁ。」
公園清掃のおばちゃんはそう教えてくれた。関門海峡方向にせり出すようにつくられた、真新しいウッドデッキから海峡の対岸を見ると、向かい側にきれいなお椀型の山が見える。
「あの砲台の山の上に打ち上げ花火が上がったら、面白くない?」
一人が言った。
「火薬」を使って「ドンッ!」と花火を「打ち」あげる...。それは、既に武装解除されて70年近く経つ、かつての砲台とダブるイメージをいくつも持っている。
そしてこの打ち上げ花火は、リアリティが薄れていく戦争やその時代と僕らとをリンクさせる「落とし穴」になるかもしれない...、そんなことを思った。
早速、関門橋を福岡側に渡って門司からその山に登ると、そこには要塞の跡があり、それは森の中で人知れず朽ちていた。明治維新以降、欧米に対抗し軍国主義に猛進する中で日本全国にいくつもこのような砲台がつくられた。太平洋戦争末期、対軍艦用の砲台の一部には対空高射砲が設置されたそうだ。そして 1945 年の終戦を境に、この場所も含めて日本全国の砲台は完全に武装解除される。機能を一切失ったコンクリートの固まりがこの山にも残された。僕らの目の前で、日常と忘却の中に埋もれていくこの遺構は、敗戦からこの国が根底に持ち続ける違和感やねじれを表している存在のように見える。
「この砲台跡から花火を上げて、対岸の火の山公園からそれを見よう!」
話し合いの結果、花火の打ち上げは 7月22日の10時55分から1分間に決まった。
それは46年ぶりに訪れる日食の一瞬。そんな真昼の空に打ち上げようというのだ。
今回この日食の見える地域の人達の気持ちは、日食の持つある種の「高揚感」と「一体感」の中で、太陽を中心にひとつになるだろう。
そして、(これは些か強引な結び付けかもしれないが)その「高揚感」や「一体感」はこれらの砲台の造られた時代が持っていた大衆を飲みこむ空気に似ているのではないか ? 初夏の真っ昼間に、隠された太陽の下、砲台跡から花火を打ち上げてみる。それがこのイベントだ。
「何のため?」
「花火は見えるの?」
それはよくわからない。でも、見えにくくなっていたものが少しだけ見えてくるはずだ。例えばそれは、戦争があった事実や、日々消えていく記憶や、今この世界に生きていること...。そしてまた何かを感じるだろう、そのことについて僕たちは自分の言葉で話せるのではないか。
この日、僕らは打ち上げ花火で落とし穴をつくってみるから、みんなで落ちに来てくれたらうれしい。これは机上のお勉強じゃない。もしかすると、この落とし穴で地球の反対側まで落ちてしまう人もいるかもしれない。
あなたも参加してみませんか?
僕らが作った落とし穴に。
火の山公園で日食の花火に。


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『Re-Fort PROJECT』プロフィール
200X 年に下道基行が中心となって発足。日本全国で放置されている戦争の遺構を使い、イベントを起こしたり、※スクウォットする。またそれを記録していくプロジェエクト。 このような遺構の多くは過去に国(軍)が造ったもので、現在では建造物自体の権利が曖昧になり、したがって所有についてもグレーゾーンとなっていることがある。そのため転用しやすい。 イベントの参加者はこれらの遺構に直接触れ、この国と戦争とが地続きであったことにリアリティを感じることで、何かしらの戦争との接点を持ってもらう。
また、ここ数年、戦争体験者が減少していくことを受けて、行政による遺構の見直しが始まっている。しかし、遺構を柵で囲み“平和公園化”“モニュメント化”することは、むしろ遺構の持つ時間の流れを遮断し、歴史に遺構を埋没させていくことにもなる。本プロジェクトでは、保存対象にならないような遺構に対して、その都度さまざまなアーティストがそれに合わせた趣向で一時的にリノベーションを試みる。
『Re-Fort』はリフォートと読む。再生や再利用を意味する「Re」と、要塞や砲台を意味する「Fort」を組み合わせた造語。
Re-Fort PROJECT vol.5 メンバー(会田大也、下道基行、中崎透、服部浩之、山城大督)

※スクウォット(squat)とは、元々は“居座る”の意。ヨーロッパに見られる運動で、放置されたままになっている建造物を勝手に使用する。これには利用価値の無くなった物件の有効利用のプレゼンテーションという意味合いがあり、アーティストがスクウォットした建物が後にアートセンターとして利用される等、土地利用の柔軟な解釈として存在する。