2019年12月15日 09:54 下道 基行 */?>

基本、グループ展は、学芸員が文脈やテーマで選んだ複数の作家を同じ空間内に壁を作り並べる。
今回の日本館の展示では、学芸員が選んだ作家や作曲家や学者や建築家が、同じ空間内で話し合いをしながら一つの空間を作っていった。そのために、多くの会話がミーティングやチャットや旅やイベントの中で行われた。見えない学芸員の仕事は、参加者同士の丁寧な関係作りを意識したキュレーションだった。

今後、近い未来、学芸員による”コレクティブ”を語る”壁のない””グループ展”が多く行われていく「かも」しれない。コラボレーションや壁がない展示は何だか言葉として美しいし。でも、それはかなり難しいだろう。普通、各作家の作品を守りながら並べていく従来のグループ展の脳では、作家同士にダイレクトにぶつけ共同作業を行わせることはなかなか困難であるし、作家として想像するだけでゾッとする。たくさんの事故が起こるだろう。(ま、その事故を引きで記録して、「共同は難しい」と批評的に語るのも出来なくもないが、それは悪趣味ではないか。)

そういう意味で、今回の日本館の展示は、作家さんの展示として強いものかは分からないが、面白い独特のバランで成り立っていると思っているし、少しだけど新しい。そして学芸員の言葉を借りると”ポジティブ”なバランスで成り立っている。そして、このバランスは意外と難しい。